あなたは子供の敵か味方か
家庭内暴力を解決するために必要なこと
子供が家庭内暴力にはしる理由
人間は動物です。ですから、本能的に他人を敵か味方かに区別する習性が備わっています。
ただ、平和な社会に暮らしていると、その能力が衰えてしまいがちです。
そして、自分の子供の声すら聞き分けられなくなってオレオレ詐欺なんかに引っかかってしまったりするのです。
そんな安穏とした暮らしをしている人のことはさておき、不登校や引きこもりなどで社会に適応できていない子は、そんな敵味方の判断に関しては、極度に神経質になっています。
と言うより、自分をそんな状況に追いこんだ社会に対して敵対心を抱いていて、 まわりはみんな敵だと思ってしまっていることがおおいものです。
それは世間一般の人々に対してもそうですし、社会のシステムに対してもそのような感情を抱いていたりします。
だから、引きこもりだった人が刃物で無差別に人を襲ったりするような事件があとを絶たないのです。
そしてまた、そんな敵である社会から自分を守ってくれなかった、場合によっては、敵と一緒になって自分を攻めてきた親に対しても敵対心を抱いていることは少なくありません。
親を完全に敵とみなしてしまっている場合は、まったく口をきかなくなったり、部屋にこもってしまったり、最悪は家庭内暴力という行動に走ってしまいます。
『なぜウチの子は家族に暴力をふるうのでしょうか』
と疑問を口にされる親御さんがいますが、答えはカンタンです。
敵だから、です。
敵に対して暴力をふるうのは、動物として自然な行動です。
もちろん人間には理性があるので、本来なら暴力は理性で抑えるのが常識人、社会人としてあるべき姿ですが、そもそも不登校や引きこもりとして社会から外れたところにいるわけですから、そのような理性も働きにくくなっているのです。
なぜ親が敵になるのか
それではなぜ、子供が親を敵とみなしてしまうのでしょうか。
これは、それぞれの家庭によって様々です。
子供にとってだけでなく、人類の敵だな、と思えるような親御さんも残念ながらいます。
このような親御さんは電話の段階でお断りしているので、その後どうなっているのかはわかりませんが、たぶん、子供さんはどこかの時点で爆発していることでしょう。
あるいはお金に余裕のある人なら、強制的に子供を連れて行ってくれるような施設に預けて、厄介払いしているかもしれません。
いずれにしても、子供にとってはとんだ災難です。
それに対して、こんな立派な(社会的地位や経済的にではありません)親御さんになぜ暴力をふるうのか、と思えるようなケースもあります。
このようなケースでは、まずまちがいなくお子さんは精神疾患か発達障害です。
この場合も、なかなか私の手には負えませんので、精神科への入院をおすすめしています。
上にあげた2つのような極端なケースはどうしようもありませんが、一番多いのがこれらの中間のケースです。
もちろん、中間と言っても様々なパターンがあります。
親の側の問題点は
・甘やかし
・過度な教育やしつけ
・放任しすぎ
・緊張感のある夫婦関係、嫁姑関係
・子供を裏切った、見捨てた、助けなかった
などが、よくみられます。
子供側の問題点は
・わがまま
・臆病
・高いプライド
・神経症
などです。
これらが高じて不登校や引きこもりになるわけですが、ここがキーポイントになります。
このような性格に育てたのは親であり、子供もそれを自覚しています。
だからおおくの子が判で押したように、
『こうなったのはお前のせいだ』
というセリフを口にするのです。
もちろん、本当は性格形成は親の責任だけでなく、自分自身の責任もあるわけです。
ですからその責任の割合によって、ほぼ逆恨みになっている場合と恨まれても仕方ない場合とがあるということにはなります。
ただいずれにしても、子供がそんな親に対して恨みをもってしまうと、親は敵になってしまうのです。
そのため家庭内暴力を起こしている子は、敵に四方を囲まれて孤立無援の状態で悩み、苦しんでいます。
唯一、身近で助けてあげることのできる親が敵になってしまっているので、もうそこには絶望しかありません。
だから、親がどんなにがんばっても家庭内暴力はなかなか解決できないのです。
家庭内暴力を解決するには
それではどうすれば解決できるのか。
これは、家庭内暴力にいたっていない不登校や引きこもりについてもおなじことが言えるのですが、一番解決の可能性が高いのは、味方になってやれる人間が子供に接することです。
もちろん、そこらへんのカウンセラーや解決業者では逆効果になってしまうことが大半です。
なぜかというと、この敵味方の原理をわかっていないので、親の側から、あるいは社会常識という論理を振りかざして、真っ向から敵として近づいていくといった暴挙にでることがほとんどだからです。
あるいは、口先だけで同情や理解を示して取り入ろうとしたり。
そんな小芝居が通じると思っているのです。
もしカウンセラーを利用するのであれば、不登校や引きこもりだけでなく家庭内暴力も引き受けますと、ちゃんと明記してあるところを選ぶことをおすすめします。
家庭内暴力という身の危険を感じるようなケースからは逃げて、おとなしい不登校や引きこもりの子だけを扱うカウンセラーや業者は、経験も浅いかほとんどもっていないかで、舌先三寸で丸めこんでやればいいや、という程度のいい加減な商売をしているところがほとんどだからです。
自分の仕事が人の一生を左右するんだ、下手をすると人生を壊してしまうんだ、という責任感も緊張感もない、金儲けだけを目的として参入したたんなる商売人です。
それでは具体的にどのような人がいいのか、子供の味方になれるのかというと、やはり不登校や引きこもりの経験がある人間、もしくは、そのような気持ちが本当に理解できる人間ということになります。
まあ、実質的に後者はほとんどいないので、それに近い人間ということにはなりますが。
それではなぜ、経験者であれば味方になれるのでしょうか。
別にのっけから『僕も昔、おなじことで悩んでたよ』などと言うわけではありません。
そんなことをするのは、やはり経験の浅い素人です。
自分の過去など、あえて言う必要はありません。
そんなことをしなくても、子供のほうは無意識のうちにも自分とおなじ匂いを嗅覚で感じとれるからです。
武道の達人どうしであれば、技をひけらかさなくてもお互いに察知できます。
同性愛者は、自分とおなじ人間を瞬時に見抜きます。
サラリーマンはサラリーマンどうし、金持ちは金持ちどうし、犯罪者は犯罪者どうし、天才は天才どうし、なにも言わず、あえて特徴を見せなくても同類というのは通じあうものがあるのです。
これは人間の無意識、潜在意識の働きによるものです。
これが前回述べたシンパシーなのです。
そんな無意識の部分で通じあうことができれば、あとはそのカウンセラーの力量ということになります。
少々の家庭内暴力があろうと、精神疾患や重度の発達障害でなければ改善させせることはできます。
そのためには、なによりも適切な対処をすることが重要になります。