カウンセラー、カウンセリングが不登校、引きこもりを作っている
ある家庭の悲劇
不登校や引きこもりの増加にともなって、その解決をうたうカウンセリングセンターがあちこちにできて、専門カウンセラーをうたう人も急激に増えてきました。
それ自体は悪いことではないように思えますが、そんな専門家と称するカウンセラー自身が不登校や引きこもりをますます悪化させているケースも少なくないので注意が必要です。
先日も、子供の不登校、引きこもりと家庭内暴力に悩んでいるご夫婦が相談に来られました。
そして、他のカウンセリングで『家庭を子供の居心地の良いようにしてあげることが大切です。そうすればお子さんに動き出す力がわいてきますよ』とアドバイスされたと言うのです。
私はこれを聞いてあ然としましたが、このご夫婦はもちろんそのアドバイスの良し悪しなどわかるはずもありません。
カウンセラーの言うことを守り、1日中無制限にゲームをさせたり、子供の要求に合わせて好きなものばかり買ってきて食べさせたりと、子供の天下のような生活をさせてきたということでした。
当然、そんなことで改善するはずもなく、それどころかどんどん暴力もわがままもエスカレートしてどうにもならなくなり、私のところに相談にやってこられたわけです。
カウンセリングは命に関わる仕事である
実はこのようにカウンセリングにかかったせいで余計に悪化してしまうというケースは、とてもたくさんあります。
たぶんカウンセラー自身はなんの悪気もなく、ただただ教えられたマニュアルにしたがってアドバイスしているだけなのでしょう。
臨床心理士やその他の心理系の資格をとって、困っている人を救おうという希望と志をもって仕事をしているのかもしれません。
ただ不登校や引きこもりのカウンセリングというのが、人の人生を大きく左右するものである、ということを全然わかっていないような気がします。
この仕事は、ひとつ間違えば人の人生を台無しにしてしまうことは普通にありますし、大げさでも何でもなく、人を殺してしまうことだってあるのです。
不登校や引きこもりの末の自殺というのは、ほとんど報道されないだけで実際はかなりの数ありますし、家族を道連れにしたり、赤の他人を殺傷したりというのは、たまにニュースで見聞きするとおりです。
失恋や対人関係の悩みといったような人生の一部分に関するカウンセリングなら、そこまでの知識も技術も経験も必要ありません。
面倒見のいい職場の先輩や人気のある占い師程度の話術があれば、相談者の心を軽くさせてあげることはできるでしょう。
しかし不登校や引きこもりというのは、その人の人生すべてがかかっている重大な問題なのです。
カウンセリングやサポートをする側も、それだけの危機感と責任感をもって当たらなければなりません。
不登校や引きこもりが増えていることをビジネスチャンスととらえて参入している業者がたくさんありますが、そのうちのどれだけが人の人生を大きく左右してしまうという責任感をもって、正しい知識と技術に裏打ちされたサポートを提供しているのか、おおいに疑問に思っています。
私自身は、この仕事は普通の仕事とは一線を画するものだと考えています。
ですから私は、自身の四半世紀にわたる不登校、引きこもりカウンセリングの臨床経験からの研究成果や解決法など、カウンセリングノウハウをホームページやこのブログを通じてすべて公開しています。
これは、他の業界、業種であれば他人にも同業者にも絶対に明かさない、企業秘密ともいうべき情報です。
しかし、そんな損得勘定やビジネスライクな割り切りでやっていては、救える人数が限られてしまいます。
真似をされてもいい、いや、むしろ私の知識も技術もどんどん盗んで真似して、一人でも多くの人を救ってほしい、そんな気持ちで情報を公開しているのです。
また遠方に住んでいて、不登校、ひきこもり、ニート自立支援協会のサポートが受けられないので、近場でカウンセリングを探そうと思っている方に、正しい知識を身につけてカウンセラー選びの基準にしてもらいたいという思いもあります。
ただ現状は、まだまだ正しい情報が広まっておらず、知識も技術も経験もない不登校、引きこもりカウンセラーによって事態を悪化させられているケースが後をたちません。
ですから自分たちだけではどうにもならないと第三者のサポートを求める場合は、十分にリスクを分かったうえで利用されることをおすすめします。
ちなみに、冒頭で述べた『家庭を子供の居心地が良いようにする』というのは、どこが間違いなのか説明しておきましょう。
これは、親が子供を虐待していたり、過度な勉強を押しつけていたり、他の兄弟ばかりかわいがっていたり、酒、ギャンブル、異性などにだらしない生活を送っていたりと、家庭内の問題が不登校や引きこもりの原因となっているときの対処法なのです。
親がこれまでの自分の接し方を反省して、子供が安らげるような家庭を作ってやることで、みずから動きだす力を取り戻すということなのです。
しかし実際は、そんなひどい親が子供の不登校や引きこもりを心配して相談にやってくることはありえないので、こんなアドバイスをすることは通常のカウンセリングではまったくないのです。
そして、わがままや甘え、あるいは、発達障害などから不登校や引きこもりになって、家庭内暴力までしているようなケースで、さらに子供を甘やかして言いなりになってしまったりすると、子供はますます増長して状況が悪化してしまうのは当たり前です。
つまり、アドバイス自体は間違いではないけれど、言う相手が大間違いだということです。
どんなによく効く薬でも間違った患者に処方すれば殺してしまうこともあるのと同様に、いくら正しいアドバイスでも間違った相手に提供すれば、取り返しのつかないことになります。
最近では医師に処方された薬をネットなどでチェックして確かめる人も増えているようですが、カウンセリングを受ける場合もカウンセラーの言うことを鵜呑みにするのではなく、ご自身で調べてみるということも必要だと思います。